個人主義と一般的信頼

鬼頭美江らの文献レビューによると、個人主義文化の人々は集団主義文化の人々よりも密接な関係(例えば、社会的支援、自己開示、親密さ、愛情)に積極的に従事している、としています。このような逆説的な結果を説明するために、鬼頭らは個人主義文化のほうが、集団主義文化よりも関係の流動性が高く、よって新しい関係を形成し続けていくために積極的に関わっていく必要があるからではないか、と指摘しています。*1

 

 ところで、稲垣の研究によると、強いコミットメント関係に入ることではなく、新しいコミットメント関係を形成しないことが、一般的信頼の低さにつながるとしています。(この説には異論あり)

*2

 

したがって、個人主義的な人々はたとえ流動的な社会関係の中でも、集団主義的な人々よりも積極的に、多くの関係性を築くことを望み、一般的信頼も高くなりやすいのではないか、と考えられるのです。

*1:Mie Kito et al., (2017) "Relational mobility and close relationships: A socioecological approach to explain cross-cultural differences" Personal Relationships, 24, (1), p.114–130

*2:稲垣 佑典 (2009)「都市部と 村落部における信頼生成過程の検討」社会心理学研究, 25(2), p.92-102